学科だけ、あるいは実技だけ受かった状態を一部合格といいます。片方は免除されるので、残りだけを受け直せばFP技能士になれます。この記事で扱うのは、その残りをいつまでに取りに行くか、どこで降りるかの判断です。免除の制度そのものはきんざいとFP協会、どっちで受けるかで扱っているので、ここでは判断に必要な範囲だけ引きます。
試験時間や合格基準、実施期間の具体例は日本FP協会(実技は資産設計提案業務)で受ける場合のものです。法令基準日と免除の期限は両団体で共通なので、そこはきんざいで受ける場合にも当てはまります。
免除の期限と、残っている機会の数
まず期限を押さえます。日本FP協会の試験要綱にはこう書かれています。
学科試験の一部合格者は同じ級または下位の級の学科試験を、実技試験の一部合格者は同じ級の実技試験を、合格した試験実施日の翌々年度末まで免除できます。
起点は合格発表日ではなく試験を受けた日で、そこから翌々年度の末までです。たとえば2026年6月に学科に受かったなら、2028年度末、つまり2029年3月31日までが免除の期限になります。年度の初めのほうで受けていれば、3年近く残る計算です。
受けられる回数のほうも、期限までで見れば詰まりません。CBTは通年で実施されていて、次に受けられるのは前回の合格発表日の翌日以降です。期限まで2年以上あるなら、機会は何度も回ってきます。
ただしこれは「期限まで」で見た話です。実際に使える窓は、このあと見る法令基準日のほうで短く切られます。
待つあいだに動く法令基準日
余裕を削るのは期限ではなく、出題の基準になる法令が入れ替わることです。2級・3級のCBTは、当年6月から翌年5月までに受ける分が当年4月1日に施行されている法令を基準にします。年度をまたぐたびに、この基準日が1年進みます。
学科に受かった時点の知識は、その回の基準日にそろっています。実技を1年後に受けるなら、その間に改正された論点は確認し直すことになります。免除の期限は動きませんが、改正があった分野を抱えている場合、待つほど確認する範囲は広がります。
だから逆算の起点は、期限ではありません。直近の6月です。 6月より前に受けられるなら、学科のときに覚えた法令のまま実技に向かえます。またいでしまうと、改正された部分の学び直しが乗ります。法令基準日の詳しい仕組みはFP2級、独学で足りなくなるのはどこかのほうで扱っています。
「期限まで粘れる」ことと「粘る価値がある」ことは、別の話です。期限が3年近く残っていても、同じ法令のまま受けられるのは次の6月までに限られます。
そして、6月までの窓が短い人ほど、回数のほうも効いてきます。次に受けられるのは前回の合格発表日の翌日以降で、合格発表は受検した月ごとに日が決まっています。たとえば4月に受けて落ちた場合、その回の合格発表は5月20日、5月の実施期間は5月23日まで、5月24日からは休止期間です。6月より前に受け直せるのは3日間しかありません。 6月が近い時期に一部合格した人ほど、1回で決める前提で組むことになります。受け方の制約そのものはFPのCBT化で、何が変わって何が変わらないかで扱っています。
残りが学科か実技かの差
次に、残っている試験そのものを見ます。協会の2級なら、外から確かめられるのはここまでです。
| 残っている試験 | 試験時間 | 問題数 | 出題形式 |
|---|---|---|---|
| 学科 | 120分 | 60問 | 多肢選択式 |
| 実技(資産設計提案業務) | 90分 | 40問 | 多肢選択式及び記述式 |
どちらが軽いとは言えません。 実技は科目が1つに見えますが、協会の試験範囲のページは実技について「学科試験の試験範囲について、下記の項目を審査」と書いています。つまり実技も6分野の内容を土台にしていて、そのうえで提案業務のプロセスを問う形です。範囲が狭いわけではありません。
だから残作業の大きさは、科目名や問題数ではなく、自分の到達度で測ることになります。残っている側の公表問題を本番と同じ時間で解いて、合格基準(学科は60点満点で36点以上、実技は100点満点で60点以上)との距離を見るのが、いちばん確実です。この測り方はFP2級、独学で足りなくなるのはどこかでも使っています。
降りるという選択
降りる判断も、同じ材料から出せます。
期限を過ぎると、免除は使えなくなります。合格済みだった側も、あらためて受け直しになります。 一部合格は積み立てではなく、期限つきの権利です。だから「いつか気が向いたら」と置いておくと、期限の日に価値がゼロになります。
早めに決めることで減るのは、これから使う分です。受検料も、期限を意識しながら細く続ける勉強時間も、降りると決めた時点から先は使わずに済みます。すでに払った受検料と、すでに使った時間は戻りません。
続けるか降りるかは、両方について同じ項目を並べると比べられます。
- 残っている科目の現在地: 公表問題を本番と同じ時間で解いたときの得点と、合格基準との距離
- 次の6月までに確保できる学習時間: その距離を埋められる量か
- その期間に受検できる日: 実施期間・休止期間と、前回の合格発表日以降という条件を満たす日があるか
- 免除の期限: 翌々年度末までに、上の3つがそろう時期が他にあるか
4つとも埋まらないまま期限だけが近づいているなら、降りる判断のほうが自然です。逆に距離が近く、6月までに受検日を置けるなら、取り切るほうが安く済みます。
なお、両方に受かるとFP技能士になり、合格証書が発行されます。学科の一部合格は同じ級または下位の級の学科試験に使えますが、技能士になったあとは期限なしで同じ級または下位の級の学科試験が免除されます。ここは一部合格の期限つきの免除とは別の扱いです。
免除申請の扱い
免除は自動では効かず、予約のときに申請します。ここで判断に効くのは、一部合格番号が通知されるのが受検月の翌月中旬だという点です。番号が出る前に残りの科目を受けたい場合、一部合格番号を入力する形の免除申請はできません。
そのために協会は「自動免除」を用意しています。予約画面で自動免除を希望すると、同じ受検者ページに有効期限内の一部合格があるとき、組み合わせて合格と判定してくれる仕組みです。要綱はその例として、4月に学科を受け、番号が出る前に5月の実技を予約して自動免除を申請するケースを挙げています。これは、この記事が勧めている「6月より前に取り切る」動き方そのものです。 番号を待っていると6月に入ってしまうので、急ぐ場合は自動免除のほうを見ます。
申請を落としたまま両方に受かった場合も、行き止まりではありません。要綱は、その場合でも両方免除申請を行えば合格証書が発行されると書いています。なお、予約の時点で「学科試験と実技試験」をまとめて選んで両方に受かったときは、免除の申請そのものが要りません。団体をまたぐときの条件はきんざいとFP協会、どっちで受けるかにあります。
運営者の場合
運営者は3級・2級とも学科と実技を続けて受けて合格しているので、一部合格の状態を経験していません。この記事で書いているのは、公式の要綱と案内から読み取れる範囲だけです。実際に片方だけ受かった人がどう感じるか、モチベーションがどうなるかは書けません。
書けるのは、制度の側から見た損得です。免除には期限があり、期限より先に法令基準日が動く。この2つだけは、誰が受けても同じように効きます。
どう判断するか
- 起点を期限ではなく直近の6月に置く: 免除の期限は翌々年度末で3年近く残ることもありますが、6月をまたぐと法令基準日が1年進みます。改正された論点があれば、そのぶん確認と覚え直しが乗ります
- 残りの重さは科目名ではなく到達度で測る: 実技も学科の試験範囲を土台に審査されるので、科目が1つでも範囲が狭いとは限りません。残っている側の公表問題を本番と同じ時間で解いて、合格基準との距離を見ます
- 6月が近いなら、1回で決める前提で組む: 次に受けられるのは前回の合格発表日の翌日以降です。4月に受けて落ちると、6月前に受け直せるのは3日ほどしかありません
- 降りるなら期限前に決める: 期限を過ぎると合格済みの側も無効になります。早く決めた分だけ、これから使う受検料と勉強時間が減ります
- 急ぐなら自動免除を見る: 一部合格番号の通知は受検月の翌月中旬です。番号が出る前に残りを受けるなら、予約時に自動免除を申請します。落としたまま両方に受かった場合も、あとから両方免除申請で合格証書は出ます