FPの勉強を始めるかどうかと、FPに相談するかどうかは、並べて比べられているのをよく見ます。この記事で扱うのは、相談を何に使うかです。
先に結論を置きます。相談は「何を買うか」を決めるためではなく、「自分の論点が何か」を言葉にするために使えます。商品の提案が出た時点で、そこから先は別の判断です。 運営者はこの順番を実際に通っています。家を買おうと考えて住宅ローンの相談をし、そのあとでFP技能検定を受けました。
具体的な金融商品や保険の是非は、この記事では扱いません。相談窓口が業務として引いている線を、書き手側の線として借りています。 その線はあとで出てきます。
「無料」には理由が2種類ある
無料の相談を「無料だから」でまとめると、相談料を取らない理由の違いが消えます。
日本FP協会は、常設の無料窓口を2つ持っています。
| FP電話相談 | くらしとお金のFP相談室 | |
|---|---|---|
| 相談料 | 無料 | 無料 |
| 枠 | 原則1人30分・1回限り | 50分・予約制 |
| 受付 | 0120-211-748(平日10:00〜16:00、15:30受付終了) | 本部(東京)や大阪など全国8か所 |
対面のほうは会場で条件が違います。大阪は「当相談会でのご相談は1回限りとし、相談時間を50分間(各時間帯1組)に限らせていただきます」と回数まで明記していて、東京本部の注意事項に同じ記載はありません。東京は水木金の枠で、木曜が終日Zoomのオンラインです。このほかに支部独自の無料相談会が定期開催されている場合もあると協会は書いていて(静岡・茨城などが例に挙がっています)、常設の2つで全部ではありません。
どちらのページにも、範囲の限定が置かれています。電話相談のほうは、こうです。
金融商品の紹介や提案、個別銘柄の選定及び具体的な運用の将来予測、個別具体的な税金などの金額の計算などはお答えできかねます。
そして「特定の投資商品やサービス等の勧誘を目的とするものではありません」という一文は、電話と対面の両方のページに置かれています。 電話相談のほうには、無料である理由も書かれています。「FP普及活動の一環として、生活者の方々に気軽にお電話にてFP相談を体験していただくために」開設した窓口です。対面・オンラインのページに同じ説明は見当たりません。
もう一方に、民間の無料相談があります。ここで断定できるのは、顧客が払う相談料とは別の収益経路が、監督官庁の文書の中で名指しされているところまでです。金融庁「顧客本位の業務運営に関する原則」は、利益相反の可能性を判断するときに考慮すべき事情の例として、こう挙げています。
金融商品の販売に携わる金融事業者が、金融商品の顧客への販売・推奨等に伴って、当該商品の提供会社から、委託手数料等の支払を受ける場合
同じ原則は、顧客へ分かりやすく提供すべき重要な情報のひとつに「顧客との利益相反の可能性がある場合には、その具体的内容(第三者から受け取る手数料等を含む)及びこれが取引又は業務に及ぼす影響」を挙げています。隠れた慣行ではなく、開示すべき事項として公的に扱われている形です。 個別の窓口がどうなっているかは、その事業者の説明で確かめられます。
枠があるのは協会側だけではありません。協会の法令のページは、保険業法について「保険募集人(生命保険募集人および損害保険代理店)でない者は、保険業法により保険募集はできません」と書いています。金融商品取引法の投資助言・代理業も、同じページに挙げられている項目です。誰が相談を受けても、登録や認可のない業務はできないという枠が、どちらの側にもかかっています。
なお協会の相談室は、担当するFP個人の意見に基づくもので、協会としての見解ではないとも書いています。
有料相談の金額は、分布なら公表されている
協会の料金体系のページは、個々の金額をこう説明しています。
ファイナンシャル・プランナー(FP)に有料で相談する場合の料金体系は、FPがそれぞれ独自に設定しています。
本文では「相談1時間●●円など」と伏せ字にしてあり、締めは「具体的な金額や料金体系については、FPに相談を申込む前に直接ご確認ください」です。個々のFPの料金は、協会が決めているものではありません。
ただし同じページに、分布のほうは図で出ています。協会が認定しているCFP・AFP認定者が設定している1時間当たりの相談料について、2021年度のファイナンシャル・プランナー実態調査(無回答除く)の結果です。
| 1時間当たりの相談料 | 割合 |
|---|---|
| 5,000円未満 | 14.2% |
| 5,000〜10,000円未満 | 47.3% |
| 10,000〜20,000円未満 | 33.5% |
| 20,000円以上 | 5% |
半数近くが5,000〜10,000円未満の帯にあり、5,000円未満と20,000円以上を合わせても2割ほどです。図には「提案書の作成を依頼する場合などは、別途費用がかかります」という注記も付いています。2021年度の調査なので、いま申し込む相手の金額がこの分布のどこに入るかは、その相手に聞くしかありません。 それでも、桁の見当が公式の資料で付きます。
自分で勉強すると、どこまで行けるか
運営者にとっての収穫は、制度の存在を知り、自分がその対象かを見分けられるようになったことでした。住宅ローンの控除、保険の中身、NISAやふるさと納税のような制度について、名前と仕組みと、自分に関係があるかどうかが分かる状態です。
3級の細目は、この6分野を「概略の知識を有すること」「一般的な知識を有すること」といった水準で並べています。細目が定めているのは出題の範囲と水準で、勉強したあとに誰がどこまで到達するかは書かれていません。 上に書いたのは運営者1人の結果です。
そのうえで、細目に何が入っているかは確かめられます。自分の数字を出す側の項目が、範囲の中にあります。
- ライフプランニングの手法として「可処分所得の計算」「ライフイベント表の作成」「キャッシュフロー表の作成」「個人のバランスシートの作成」「必要保障額の計算」「係数の意味と活用」
- 資金計画として「住宅ローンの仕組み」「住宅ローンの種類と内容」「住宅ローンの借換え」「住宅ローンの繰上げ返済」「老後生活の必要資金の準備」「老後資金プランの作成」
返済計画や必要保障額の組み立ては、相談の側にしかないものではありません。 教材費の下限は0円で、無料の演習サイトで足りる線があります(FP3級、教材にお金を払う条件と過去問だけで受かるか)。受検するなら受検手数料が別にかかります(FP3級を取る意味はあるか)。
この記事も、個別の適用や金額の計算には踏み込みません。「その制度を使うべきか」「どの商品を選ぶか」「いくら得か」は扱いません。冒頭で書いた「借りている線」がこれで、協会の電話相談が範囲外としている項目とそろえてあります。
相談でしか出てこないもの
範囲の中にあっても、自分では出せない数字があります。相手方の審査を通さないと出ない数字です。 借入可能額がその代表で、金融機関が自分の収入や信用をどう評価するかは、聞くまで分かりません。運営者の場合も、住宅ローンで出せる額と返済の見通しは相談の席で出ました。
ここに順番の問題があります。個別の数字を出してもらう席は、商品の提案が出る席と同じになりやすいほうです。 収入と資産を伝えた相手は、その情報で提案を組める状態になります。相談料を取らない窓口であればなおさら、そこが収益の経路です。
座る前に確かめられることが3つあります。①住宅ローンや保険の仕組みが分かっているか ②自分で出せる数字(キャッシュフロー表・必要保障額)を持っているか ③何を決めるべきかを書き出せるか。 3つが埋まっていれば、提案が出ても「それは別の判断だ」と切り分けられます。埋まっていないまま座ると、切り分ける手がかりが手元にありません。
運営者の場合
運営者が受けたのは、不動産会社の紹介で、相談料は無料の相談でした。商品の提案は出ました。
それでも役に立っています。役に立った中身は3つで、①住宅ローンの仕組みで知らなかったことが埋まった、②自分の場合の数字が出た、③何を決めるべきかが整理された、です。提案そのものではありませんでした。
「相談は無駄だった」とは書きません。実際に役に立っています。同時に、役に立った部分は商品の提案の側ではなかったというのが、この記事の結論のもとになっています。
そのあとでFP技能検定を受けました。相談で聞いた話の意味がもっと分かるようになりたかった、というのが順番としては近いです。相談が先で、勉強があとでした(FP3級で止めず、FP2級まで行く意味はあるか)。
これは1件の経験です。紹介経由の相談では提案が出る、という一般化はしません。 会社も、提案された商品も、そのあと購入に至ったかも、ここには書きません。
どう判断するか
- 「無料の理由」で分ける: 協会の常設窓口は電話が30分1回・対面が50分で、どちらも勧誘を目的としないと明記されています(電話のほうは普及活動の一環とも書かれています)。民間の無料相談については、顧客の相談料とは別の収益経路が、金融庁の原則で開示すべき事項として名指しされています。無料かどうかより、この違いが判断に使えます
- 制度を知るだけなら、勉強の側で足ります: 制度の存在と、自分が対象かどうかを判定するところまでなら、相談は要りません。教材費の下限は0円です(受検するなら受検手数料が別に必要)
- 自分で出せる数字は、自分で出してから座る: キャッシュフロー表・必要保障額・返済計画の組み立ては3級の範囲に入っています。相談でしか出ないのは、借入可能額のように相手方の審査を通さないと出ない数字です
- 座る前に3点を確かめる: ①仕組みが分かっているか ②自分で出せる数字を持っているか ③何を決めるべきかを書き出せるか。提案の中身が良いか悪いかは、この記事では判定しません。判定できる状態かどうかが問題です
- 有料相談は分布で桁を見る: 協会は認定者の1時間当たり相談料の分布を公表しています(2021年度調査。5,000〜10,000円未満が47.3%)。個々の金額は独自設定なので、申し込む相手に直接確かめます